| ◆なぜ「夜」に踊るのか −お祭りの時間論 |
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なぜ明るく運動に適した日中に踊らず、わざわざ夜に踊るのか。 「涼しいから」というのは副次的な理由です。たとえば、後で触れるように、全国には一晩中踊り明かす「徹夜踊り」の伝統を意識的に守る地域が少なくありません※1。これほど日本人が「夜」にこだわってきたのには、やはりそれだけの理由があるものと思われます。
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※1 私たちが訪れた中だけでも、以下の盆踊りで徹夜踊りが確認できます。 ・おわら風の盆 ・新野盆踊り ・郡上踊り ・白鳥踊り ・猟師かんこ踊り
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もっとも重要な、そして根本的な理由として挙げられるのは、日本の祭りそのものが本来「夜」に行われるものであった、ということです※2。
現代に生きる私たちは、お祭りが日中に開催されていることにもはや疑問を感じません。しかしよく気をつけて見ると、古式ゆかしい神社のお祭りなどでは「宵宮」「夜宮」の伝統が見られたり、夜を徹した儀式が行われていることに気づきます。
「夜」は、神聖で神秘的な時間であり、神様が来臨する時間であるというのは、とても自然で、かつとても古い時代からの考え方です。この夜に神様を迎え、歓待し、送り出す−というのが、日本のお祭りの基本的な構造なのです。
そして、訪れた神様に食事を差し上げ、さまざまな芸能でおもてなしし、みんなで一晩寝ずにお側にお仕えする、というのがお祭りの儀式の中身ということになります。
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※2 柳田国男の快著「日本の祭」に、祭りの時間の本質が余すところなく語られています。
「我々の祭りの日もその日の境、すなわち今なら前日という日の夕御饌(ユウミケ)から始めて、次の朝御饌(アサミケ)をもって完成したのであった。・・・つまりこの夕から朝までの間の一夜が、我々の祭りの大切な部分であって、主として屋内において、庭には庭燎(かがりび)を焚いて奉仕せられたのであった。」(柳田国男著、角川文庫より引用)

宵宮のまつりの例(江ノ島神社) <藤沢市・02.07.13> |
お盆は、家々やムラにとっての大切な精霊を迎えるおまつり=「魂祭り(たままつり)」という祭りの一種です。盆踊りは、精霊のためのもてなしや供養のための芸能、という側面を持っているのです※3。 盆踊りの際、夜に徹夜までして踊るのは、こうした古くからの「祭り」の伝統が、盆踊りによく受け継がれているため、と考えることができます。
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※3 「踊り子が楽しんで踊っているとき、精霊さんもいっしょに楽しんでいる」などと言う地方があります。盆踊りの別称「亡者踊」「精霊踊」は、こうした側面に関係があると思われます。
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