盆踊りは、500年の歴史をもっていますが、その中で新たなものが折り重なり、現在は百花繚乱の状況に

なっています。こうして、新旧入り交じり、ジャンルを超えて楽しまれているのが、盆踊りの特徴です。

■様々な盆踊りがある理由

盆踊りは、室町時代にはじまります。
室町の踊りは、「派手」。人を驚かす趣向でした。
江戸時代は、「素朴で若い男女が楽しむ」。村々盆踊りが浸透します。
明治時代、炭坑節に代表される、産業関連の盆踊りが生まれます。
大正から昭和初期は、日本文化の復興期。東京音頭に代表される、新しい踊り曲が作曲されはじめました。

また、日系移住により、ハワイ、アメリカ、ブラジルなどでも、盆踊りが踊られるようになります。

第二次世界大戦後の昭和平成は、河内音頭のようにエレキギターを取り入れる、民謡レコード、演歌にあわせて踊る、アニメ番組に関連した音頭など、様々なものが創作されました。
現在でも、毎年新しい踊りが作られ、新イベントが企画されています。

大きな特徴は、この室町から平成時代、それぞれに原点をもつ盆踊りが、現在も併存していることにあります。伝統維持の型だけにおさまりません。
これが、様々な盆踊りがある理由です。

■盆踊りの種類

前項のような、経緯を経て、大きく括ると、伝統系(作曲者・振り付け者不明)と現代系(作曲者が明瞭)に区分けられますが、その中でも違うパターンがあります。

1.伝統系盆踊り

 

①伝承系盆踊り

 

江戸時代以前から踊られていて、現在も、特定地域で伝承されているもの。

例: 郡上踊り、西馬音内盆踊りなど多数

 

②伝統進化系盆踊り

 

伝統に根ざしながらも、近代の変化を取り入れて進化したもの。元地域から全国に広がっている。

例 : 河内音頭、阿波踊りなど

 

③民謡踊り

 

元々地域の民謡だったものが、昭和期の保存活動の中で、変遷、整理洗練し、全国区になったもの。

例 : 炭坑節、相馬盆唄 など

 

2.現代系盆踊り

 

①新民謡

 

大正時代の新民謡運動を契機に、地域の名物をおりこんで作曲されたもの。

例 :東京音頭など

 

②歌謡舞踊・新舞踊

 

歌謡曲や演歌、もしくは昭和中期以降に作曲された民謡調音楽にあわせて踊るもの。

例 : きよしのズンドコ節 など

 

③アニメ系盆踊り

 

オバQ音頭から始まった、アニメ番組とタイアップした幼児向けの盆踊り。

例:ドラえもん音頭 など

 

④Jpop系の盆踊り

 

Jpop、広く言えば、演歌や歌謡曲以外の音楽にあわせて踊るもの

例: ダンシングヒーロー など

■伝統系盆踊りのなりたち

1400年代早々、有識者の日記にお盆に風流踊りを踊った記録が登場します。これが、盆踊りのスタートと考えられています。その前はどうだったでしょう?盆踊りの元になったといわれるものに踊り念仏があります。藤沢の遊行寺は時宗という仏教の1つですが、時宗を始めた方が一遍上人。一遍上人の一生を絵と物語で書いたものが遊行寺の保有する国宝「一遍聖絵」(いっぺんひじりえ)です。約700年前に書かれたものが今でも残っているのですが、ここに、長野県の佐久や神奈川県藤沢の片瀬で踊り念仏を行った絵があります。これが現存する踊り念仏の一番古い確証のある記録となっています。なので踊り念仏の元祖といえば、一遍上人といわれます。

この踊り念仏が、色々な変化を経て、もっと古くからあったお盆の行事や民間で伝わる踊りなどと合わさり、念仏踊り、風流(ふりゅう)踊りを経て、盆踊りになったと考えられています。風流とは(人を驚かすための華美な趣向)であり、派手な踊りが繰り広げられたようです。

盆踊りというと、現代はかなり健全なイメージですが、昔は違います。今のように娯楽がなかった時代、相当派手なイベントだったのでしょう、室町時代から明治時代まで何度も禁止令が出されています。

明治期は、文明開化の影響で、盆踊りは古い因習とみられ、冬の時代を迎えます。大正デモクラシーに、日本の文化が様々に見直され、昭和になると民謡の保存活動も始まります。そうした流れの中、形を変えながらも、古よりの盆踊りを地域で続けているものが沢山あるのです。

■現代系盆踊りのなりたち

盆踊というとこちらを思い浮かべる人が多いと思います。大正時代は、日本の伝統文化再発見の時期でした。日本の工芸品を見直す民芸運動(民芸品の誕生)、日本情緒を踏まえ子供向けに作曲された童謡、子供向けの文学である童話、日本的な音楽を西洋音階で作曲する新民謡、日本式の踊りをあらたに振り付けする新舞踊、歌舞伎の新作など、新たな動きが生じます。

そうした中で、作詞家の野口雨情、作曲家の中山晋平が作曲した須坂小唄が新民謡の最初といわれています。

新民謡の代表格である、東京音頭は、西条八十作詞、中山晋平作曲。元歌は、昭和7年に作曲された「丸の内音頭」であり、永井荷風 『墨東綺譚』には、日比谷公園で、浴衣を切符代わりに開催されたことが記されています。昭和8年歌詞を一部変えて東京音頭と改作され、小唄勝太郎、三島一声の唄で爆発的なヒットとなりました。

大正時代からレコードが普及しはじめ、これまで、生の唄でなければ対応できなかった盆踊りが、録音技術により発展していく契機になったと考えられます。

新民謡の系譜を踏むのが、現在でも作曲されている○○音頭というスタイルの曲になります。地域おこしの一環として様々な盆踊りが創作されました。

昭和期の戦前~戦後、民謡系の唄を流行歌手が歌うことにより、盆踊り曲に利用されることになります。戦前でいうと小唄勝太郎、赤坂小梅など、戦後でいうと三橋三智也、島倉千代子などが代表です。

アニメ系音頭の最初は、オバQ音頭です。藤子不二雄のオバQは大変な人気アニメであり、曽我町子が吹き込んだこの曲も大きなヒットとなります。なお、新民謡は「ヨナ抜き音階」という日本調での作曲が一般的ですが、このオバQ音頭は普通の西洋音階で創られていて、音楽的にもエポックメイキングなものになっています。

その後、ドラえもん音頭、アラレちゃん音頭、ポケモン音頭など多数のアニメ系音頭が創られています。

昭和40年代以降、盆踊り曲は、演歌やポップスでも踊られるようになり、現在は、新旧様々な曲が活用されています。

■何のために踊る?

お盆は仏教行事が原点ですが、先祖供養、飾りなど実際には日本古来の民族風習が色濃い行事です。古い盆踊りの歌詞は結構えげつないものが多かったようです。大人は普段言えないことを歌に託して憂さを晴らし、若い男女は歌と踊りで恋の駆け引きをし、子供は無邪気に音頭を楽しむという、そんな年に1度の機会だったのでしょう。

■お盆はいつか?

現在、新暦をベースにしたお盆(7月15日)、旧暦をベースにしたお盆(毎年変動 旧暦7月15日)、折衷型の月遅れ盆(8月15日 :便宜的に旧盆と言われることがある)の3つのお盆存在します。

これは、明治維新の後、月をベースしたカレンダー(太陰暦=旧暦)から、太陽をベースにしたカレンダー(太陽暦=新暦)に変わったことが一因となっています。天皇のお膝元ということで、新暦を採択した東京エリア、旧暦を維持している沖縄等、そして新暦だと梅雨時期にあたり、感じが出ないことから、折衷で月遅れの8月15日にしたところ、が存在したためです。盆踊りの時期もエリアによって違いがあります。

■盆踊りデータ

民俗芸能調査からピックアップすると、伝統系の踊りだけで全国に1000以上があります。

徳島阿波踊り123万人 高円寺阿波踊り100万人以上 郡上踊り20万人 おわら風の盆 20万人など、多くの観客を集める盆踊りがあります。河内音頭、江州音頭が盛んな関西圏は、数え切れないほどの盆踊りが開催されます。

相当数の日本人が盆踊りを楽しんでいることがわかります。

現代系の盆踊りを入れると、確たるデータがなくカウントができませんが、全国の都道府県、やっていないところがないことだけは確かです。

日本以外でも、3万人を集めるマレーシア クアラルンプールの盆踊りや、日系起源のハワイ、アメリカ本土、ブラジル、アルゼンチンの盆踊りがあります。

なお、新民謡系は、JASRACのデータを参照すると、音頭とつく曲で5000曲以上存在します。

より細かい内容を知りたい場合は、以下をご参照ください。

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