伊勢志摩地方は、いうまでもなく伊勢神宮のお膝元として神話時代からの古い歴史を持つ土地です。東海地方の中でも畿内に近いことから、古代~中世にかけて中央のさまざまな文化・芸能に接する位置にありました。近世江戸時代に入ってからは、お伊勢参りの隆盛とともに文字通り全国からの民衆を受け入れ、伊勢音頭をはじめ文化の発信地としての役割も果たしました。
伊勢神宮や松阪の国学者本居宣長の存在などから、古くから神社・神事的な要素が支配的な土地柄と考えられがちですが、近代以前は神仏習合が進んでおり、念仏芸能や仏教民俗も色濃く残っています。

伊勢地方の民俗芸能

 

伊勢地方には、神事・仏事にわたる多彩な民俗芸能が伝承されています。
「伊勢市の民俗」では、伊勢地方に伝わる多彩な民俗芸能を紹介しています。

分 類 民俗芸能(代表的伝承地)
神楽系統 「御頭神事(獅子舞)」東大淀町、「獅子舞」村松町
風流系統 「かんこ踊り」「盆踊り」県下各地
外来系統 「能楽」通町・一色町
「狂言」馬瀬町
祝福芸系統 「万歳」
競技・遊技 「歩射」通町「青年相撲」東豊浜町
民謡 「伊勢音頭」各地「川崎音頭」鹿海町

(「伊勢市の民俗」をもとに作成)
こうした多彩な民俗芸能の土壌の上に、猟師かんこ踊りは伝承されています。
三重県下の盆行事
三重県下には、豊富な盆行事が残されています。特に海岸部の志摩地方には、念仏芸能ととともに多彩な盆行事が残っているのがうれしいところです。こうした海岸部の行事を中心に、代表的な盆行事を紹介します。同じ海辺で念仏踊り系の猟師町にも、かつてはこうした盆行事が残っていたかもしれません。
(なお、この項ではホームページ「伊勢の風 南三重観光情報」より<伊勢志摩のお盆>の項を参考にさせていただきました>)
現在の三重県下の盆行事は、8月盆で行われます。「迎え」「送り」の行事や様々な火の民俗が、色濃い初盆供養の伝統のもとに繰りひろげられます。

7日  「七日盆」 志摩地方では、浜に新仏の数だけ笹舟を並べ、海に流されます。新仏はこの笹舟に乗って海から訪れます。
13日 迎え火 一般の精霊は13日の迎え火で迎えます。浜に松明を立て、迎え火を焚きます。
13日~
15日
「かんこ踊り」
「盆踊り」
 (各地)
14日 「大念仏」 阿児町・大王町・志摩町などで大念仏。新仏の遺品を下げた「傘ぶく」が墓地に並びます。
「手筒花火」 御園村上条では、大念仏かんこ踊りに伴って華やかな手筒花火。盆の火の民俗が風流化したものです。
15日 「柱松」 鳥羽の河内、松尾では楽供(がく)打ちの後、深夜の柱松(火祭り)。
松明を高い柱の上に投げ上げる。京都など各地に類似の行事が伝わります。
16日 「ふり込み」 有滝町。以前は15日。大念仏ともいう。かんこ踊りに入る前に、提灯のついた笹を持つ笹持ちと踊り子が激しくぶつかりあう興味深い行事が伝わっています。
23日 「地蔵盆」 朝田寺本堂で新仏の着物をつるす「掛衣(かけえ)」の行事が行われます。
31日 「送り船」 志摩では朝から・わらで船をつくり、町内を回って悪霊を乗せ、夕方海へ送り出します。。この行事ですべての盆行事が終わります。
伊勢通町では、ナンバ(トウモロコシ)の皮の葉を勢田川に流します。

(参考文献)「伊勢市の民俗」
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