東北~北関東一帯には、「アレサ式盆踊り」と呼ばれる一群の伝承系盆踊りが広く見られます。中でも福島県北部・相馬市の「相馬盆踊り」は人気が高く、盆踊りの定番ナンバーとして全国で楽しまれています。

相馬盆踊りの背景には、相馬の地を舞台とする、人と踊りのダイナミックな歴史がありました。江戸時代、人口減少に悩む相馬藩は移民政策を断行。新潟・北陸方面から多くの移住者を招きます。アレサ式盆踊りは、この「相馬移民」の手でもたらされたといわれています。民謡の宝庫といわれる相馬の土壌を得た盆踊りは、相馬盆踊りとして大きく花開きました。

一方明治時代になると、相馬は一転移民を送り出す立場に。遠く北海道、そしてハワイにまで渡った相馬出身者は、ふるさとのうたと踊りを大切に守り続けました。北海道の「北海盆歌」や、遠くハワイで現在も盛んに踊られている「福島音頭」などは、相馬盆踊りが源流とされています。盆踊り文化の”十字路”の名にふさわしい、相馬の地。その今の姿を見てみたくなりました。

なだらかな阿武隈高地と太平洋に挟まれて、長大な平野が北へ北へと広がります。有名な「相馬野馬追い」の舞台となるこの広大な夏の平野を、常磐線の各駅停車がのんびりガタゴト進んでいきます。

相馬の駅を街へ出ると、街燈や看板など文字通り街中にあふれる馬のシンボル。道行くいなせな若衆の浴衣にも、馬の絵柄が。街並みを楽しげにそぞろ歩く浴衣姿は、どうやら盆踊り会場へ向かう人の流れのようです。

ひろびろとした盆踊り会場。巨大な踊り櫓もいささか小さく見えるほどです。お城に近いこの工場跡地は、いまでは盆踊りの会場として大切にされています。さすがは民謡の本場、櫓の上でマイクを握るのは地元の民謡名人たち。見事な相馬盆踊り歌が夕焼け空に澄みわたると、盆踊りの輪がゆっくりとまわりはじめました。

学校、企業、農協、市役所。民謡協会にサッカークラブ。巡業中のお相撲さんチーム。数十もの団体が、幾重もの輪をつくり、揃いの浴衣で踊ります。左回りの輪の回転、中央を向いて軽くホップする動作は、まさに「アレサ式盆踊り」の特徴。踊り子たちの表情には、自慢の盆踊りを自分たちのために楽しむ、とても自然な笑顔があふれています。さしもの広大な会場も狭く感じられるような、壮大な踊りの渦でした。

夜9:00、盆踊り大会終了。
主催者からのイキなプレゼント、大輪の花火が夜空に咲き始めると、大歓声があがります。サザンのBGMに乗り、自然に踊り出してしまった浴衣姿の子どもたち。見ているこちらまで不思議な幸福感につつまれて、なぜだかちょっぴり目頭が熱くなります。盆踊りを愛する人たちがいて、愛される盆踊りがある。単純だけどとても大切な盆踊りの原点を、盆踊りの十字路相馬はあらためて教えてくれました。

開催情報
日程 8月13・14日
場所 福島県相馬市
カネボウ跡地
アクセス
(公共交通)
常磐線上野から特急3時間半
東北新幹線仙台経由で3時間
40分
アクセス
(自動車)
東北道福島西i.c.から60km
常磐道常磐富岡i.c.から60km