昔は、踊りは「掛ける(懸ける)」ものでした。

掛ける相手は人や村、神仏などさまざまですが、行列をして踊りを掛けに行き、掛けられた相手はまた掛け返すというように、中世・近世にはダイナミックな踊りの交流が盛んに行われていました。その後踊りの場は時とともに固定化が進みますが、天竜川中流域の下伊那地方では今もこの「掛け踊り」の伝承を大切に守り、寺社や新盆の家をめぐる古風な念仏踊り・盆踊りを見ることができます。

今回訪れた阿南町・和合の念仏踊りも、この下伊那の掛け踊りの一つです。夜8時からの念仏踊りはもちろん、その前に踊られる盆踊りが見逃せません。日没前に会場の林松寺に着き、早々に陣取ります。

まだ人影もまばらなお寺の庭で静かに始まったのは、念仏踊りのメンバーOさんの親子ほか1~2名の、ほほえましい盆踊り。曲目は「すくいさ」「十六」「おんたけ」と、いずれも下伊那の定番ナンバーですが、色彩的で哀調をおびた旋律と歌詞はしっかりと”和合オリジナル”のひびきを伝えています。

心地よい音頭に聞き惚れているところへ近寄ってきたOさん。「これ、よかったら」と手渡してくれたのは、なんと自筆の盆唄集でした。感激していると、「そのかわり一緒に踊ってくださいね」。踊りを掛けられた(?)からには後へはひけません。いそいそと踊りの輪に加わり、貴重な和合の「十六」を教えていただきました。

気がつけば踊りの輪も大きくなって、いつしか境内はかなりの賑わい。打上げ花火につづいて、お待ちかねの念仏踊りとなりました。老いも若きも本堂の縁に腰掛けて、思い思いに踊り見物を楽しみます。それはいつの時代も変わらぬ夏祭りの光景。その楽しさを満喫させてもらった取材旅行でした。

開催情報
日程 8月13日~16日
場所 長野県阿南町和合
アクセス
(公共交通)
JR飯田線で温田駅下車 信南交通バスで和合まで
アクセス
(自動車)
中央自動車道飯田ICより、国道256号、151号と進み、巾川付近で右折
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