概観

南北朝統一から応仁の乱、明応の政変と時代が動く中、仏教の普及である踊り念仏が、庶民の民間信仰に娯楽を伴う念仏長田となり、盂蘭盆会と結びつきます。そして、人の意表をついた派手な様相である風流(ふりゅう)とも合流し、盆の風流踊りが誕生します。盆踊りの源流です。

この時代

建武の新政、室町開府以降続いた南北朝の動乱が終わり、ひとたびの安定の後、応仁の乱、明応の政変と戦乱と混沌の時代となります。
1333年~1500年頃
1333年 建武の新政
1336年 室町幕府開府
1392年 南北朝統一
1467年~1477年 応仁の乱
1493年 明応の政変

基礎情報

人口:1000万人程度
属性タイプ:貴族、僧侶、武士、百姓、無縁者。百姓が8割以上。京で商工業を生業とする町衆が出現
寿命: 30才程度
飢饉、災害の状況:3~5年に1度の飢饉、疫病、災害
伝承媒体:貴族、武士、村落支配層だけ文字利用 口承中心
領有体制:守護権力が強くなる、荘園から地場の国人統制へ
庶民の衣服:簡素な着物、木綿や麻
庶民の食べ物:ヒエ、アワ、野菜中心
庶民住居:間取りのある茅葺き堀立式住居
庶民の娯楽/盆踊り機会:京の町衆が風流踊りの担い手になる

宗教

供養のための時宗僧の戦帯同が、戦場での芸による慰問に変化し、芸能と結びつく。この流れが、将軍の側で雑事芸事をする同朋衆となる。

盆踊り:この頃の出来事

「踊り念仏」から「念仏踊り」へ

 

・念仏という「信仰」から、「踊り」というパフォーマンスに重点が徐々にシフトしていった。
・各地にたくさん残る「念仏踊り」のブームが起きていたと想定される。
こうした芸能の変化を全体的・一律のものと考えては間違い。いまも「踊り念仏」の原型をそのまま伝える地域が数カ所あります。

山形県天童市 一向上人踊躍念仏
長野県佐久市 跡部踊り念仏
神奈川県藤沢市 遊行寺 薄念仏
京都市 空也踊り念仏

踊り念仏と念仏踊りの違いは、ある仏教宗派が念仏の普及布教のためにやるものか、民間信仰となり念仏をとなえつつも娯楽的な要素をもつか、にあります。

「盆踊り」の登場

・初期の盆踊りは、こうした「念仏踊りブーム」の中から生まれました。というより、お盆という夏の一時期に踊られる念仏踊りの一種に過ぎなかったようです。
・「盆踊り」の記録上の初見は京都伏見(看聞御記の記載)。他の初期記録も文化先進地である奈良、京およびその周辺。

盆踊り初期の記録

・特徴的なのが、「経覚私要鈔」1469年の記載。風呂釜修理に、念仏風流の興業でお金をとることを企画し、仮屋をたてて、その内で踊りを行った、という記載。お盆の風流踊りが、鑑賞、参加に足りる位魅力的だったという証拠ともいえる。

文献名著者期日西暦内容
看聞御記伏見宮貞成親王永享三年七月十五日1431即成院念佛躍如例。所々念仏躍地下依計会略云々
経覚私要鈔経覚長禄二年1458奈良のお盆 風流踊り
人夜市庭ヨリ風流来、綱鬼子切ダル所胞、(中略)有笠、同肺也、次又白雨||風流来、鎌倉殿大仏詣所肱(中略)有笠、ヲトリ念仏回、       
経覚私要鈔経覚文明元年七月十三日1469經覺風呂釜修 理費用三十貫 文を念佛風流 興行に依り調 達せんとす - 假屋を建てそ の內にて踊り を行ふ 古市郷地下人 家別に人を徵す。
古市郷地下人家別に人を徴す
他所よりの参会者に人別六銭を課す
大乗院寺社雑事記尋尊・政覚・経尋文明五年七月十七日条1473自古市風流於問跡有之。種々芸能之内古市胤栄自身成大黒者也
春日社家大中臣師淳の神事日記春日正預祐範明応六年七月十五日1497南都中近年盆のをどり(中略)不空院辻に躍堂昨日より初めてこれを建つ。
毎年盆の踊は、昼は薬師堂にて躍り、夜は不空院の辻にて躍る

・かなり都市的な場所である点に注意。地方の記録は少なく、よくわからない。
・したがって、まだ念仏信仰の宗教性を色濃く残した芸能であったようです。
当時の記録に「ナムアミダブツ」という文句があることからも、そのことがわかります。

今の新薬師寺・不空院辻を訪ねて「歴史の中の盆踊り」

伏見 指月の丘 即成院跡あたり

新薬師寺

風流と盆踊り

・この時代の盆踊りは、また「風流拍子物」(ふりゅうはやしもの)と呼ばれる。
・「風流」の華やかな作り物や出し物。その中の「拍子」(踊り)。
・盆踊りとはいっても、それはあくまで「風流拍子物」であって、芸能の中心が「踊り」であるとは認識されていなかった。
・そのため、盆踊りを表す名称は様々である。ただし、いずれも「足扁」である点に注意。

*コラム 盆踊りの起源伝承

各地の盆踊りには起源伝承があります。バラエティに富んでおり、ロマンチックでもあり、魅力的である。念仏踊り系伝承
・疫病、戦争→敵味方共に死者短期に多数→共同体に打撃大
・単なる後世のあとづけの物語とばかりとも言い切れない面があり、実証していくことが大切。
・各地の起源伝承では、戦死者の多かった戦国時代にかかわる伝説が多い。
・戦死者の鎮魂のためという考え方(説明)が一般的です。
・中世の戦記物の影響との関係の指摘(五来)
・説経文学などの文芸の流行、相互影響

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