青々と光あふれる稲田。まっすぐに伸びた真夏の道。
正面に広がるのは、蒜山(ひるぜん)の褐色のすそ野です。自転車を止めて、ゆっくりと見わたせば、360度の山々がぐるりと世界をとり巻いています。
美作(みまさか)の国、真庭(まにわ)郡。美しい地名もまことにふさわしい、と感じました。

岡山市内の旭川河口から150kmも遡った、伯耆(鳥取県)国境の山岳地帯。盆地という風土もあって、ここ蒜山高原には農耕民俗や信仰文化が豊かに伝承し、石仏や民話の里としても知られています。この高原一帯で踊られるのが、有名な「大宮踊り」です。福田神社(通称「大宮さん」)をはじめ村々のお堂やお宮が、文字通り盆踊りの”舞台”となります。

今晩の舞台は吉森堂。村のお堂そのものという風な、素朴で開放的な造りです。天井に吊るされた御仏燈は「シリゲ」という切紙細工で飾られ、その下に手踊りの輪ができます。優雅で古調な、実にしなやかな手さばき。時おり音頭にまじる「ウワハン」という不思議なコトバが、まるでこの世とあの世をつなぐ呪文のようです。

…ゆったりとした踊りのかたわらに腰かけて、楽しげに語らう子どもたち。ビールを傾けつつ、ノンビリと眺めるおとうさん。ささやかな夜店にはしゃぐ、浴衣の群れ。はるか中世の昔から、”お堂”は単なる宗教施設ではなく、集落の人々が寄り合う重要な中心施設でした。21世紀のいま、やはり人々の真ん中には”お堂”があります。そして、踊りで人々を結ぶという大切な役割を果たしつづけているのです。

帰りは、旭川沿いの田舎の夜道。深い闇がとても印象的でした。

開催情報
日程 8月10日、13日~19日
場所 岡山県真庭市蒜山地区
アクセス
(公共交通)
新大阪駅より阪急バスまたは中鉄バスで、湯原温泉。湯原温泉より中鉄バスで蒜山高原
アクセス
(自動車)
中国自動車道落合ICで国道313号に入り鳥取県側に向い、旧八束村482号交点辺り