外海は、予想以上の時化(しけ)。長崎港を出たフェリーは、たちまちジェットコースターと化しました。目指す五島列島・福江港までは、たっぷり3時間。三等客室は全員床に横になり、重苦しい空気が漂います。この瞑く果てしない波濤を超えて、誰が、なぜ、どんな芸能を伝えたのだろう?じっと天井を睨みながら考えていました。

翌14日の福江は、うって変わって鮮やかな青空。朝の城下町へと足を向けます。
「カインココ」、「オーモンデー」、「オネオンデー」。不思議な響きを持つ謎の念仏踊り群が、五島列島に分布しています。きょうの目的「チャンココ」も、有名ですが実態は不明。「午前中に商店街に来るようだ」というだけで、いつどこで始まるのかすら、わかりません。もっとも、こういうのはいつものことです。あわてず、商店街をブラつきながらカメラ片手に待ち受けます。

チャンココの”門付け”は、アーケードの中ほどで始まりました。
5人の踊り手が店の前に並び、鉦の囃子にあわせて太鼓踊りをひとしきり踊ると、次の店へ移動。次第に街の人々が取り巻き、なにやらアットホームな感じで進んでいます。しかし、集団の風体は奇抜にして面妖。頭には原色の飾り兜、首から掛けた太鼓。とりわけ目をひく、ビロウの葉の”腰蓑”。回るとフワリとひろがって印象的です。

エキゾチズムたっぷりな踊り子のいでたちを見ると、「これって南洋系?」とつい思ってしまいます。じっさい、過去には南洋イメージにひきずられて芸態が混乱したこともあったようです。しかしながらこのいでたち、実はすべて昔ながらの風流系念仏芸能に見られるものなのです。

列島中心部を遠く離れた島々で、芸能の古型が崩れずに伝わり残っている。こっちのほうが、でっかい不思議です。しかも、ベースを共有しつつも、五島各島独自の芸能表現が生まれていること。さらに、全体として”五島念仏踊り文化圏”ともいうべき独自の列島文化の存在。知りたいことはいつも”足もと”にある。軽やかなチャンココのステップを前に、船中の疑問はますます広がってしまったようです。

アーケードでの門付けは、臨時出張サービス。地元の集落の家々を廻る盆供養のため、チャンココはお昼前に退散して行きました。短いながらもなかなか刺激的な、五島の念仏踊りとの初顔合せでした。

開催情報
日程 8月13日~15日
場所 長崎県福江市
(福江島)
アクセス
(公共交通)
長崎港より、福江港行きジェットフォイルで1時間半程度
飛行機 五島福江空港行き(福岡、大阪、長崎発)

;