「風流」とは、 Sence of Beauty 。

戦国のミヤコの夜を焦がした、熱狂のビートと最先端のモード。
中世日本を照らしだしたその”ビッグ・バン”の残光は、いまも列島各地に星座のようにきらめいています。

西国九州・長崎半島の突端に位置するここ「野母崎」の地にもまた、ひとつの風流の種が根付きました。それも ”珠玉”;
の名にふさわしい風流踊りです。真夏の強烈な日差しのもと、鉾を先頭に練り歩く行列の一団。岬のそこかしこに位置する寺社などの”パワー・スポット”が、盆踊りの庭となります。浜辺の踊り庭の地名は”竜宮”。ファンタスティックです。

野母盆踊りで伝承される踊り曲は2曲。
古風で雅な「ちゅうろう」は、その催馬楽のうたとともに有名ですが、大人たちによる踊りの前に、色とりどりの浴衣に身をつつんだ子どもたちが踊ります。小魚のように可憐な小学生たちですが、しかし表情は真剣そのもの。すっと伸ばした扇の先端をしっかりと見据える瞳。額には汗が光ります。

余所では見られぬ彩を、踊りの輪に添えているのが「ちゅうろう笠」です。

編笠の上に、なにか黄色い小さなものが載っています。よく見ると、なんと「ポケモン人形」が(笑)。他の子どもたちの頭の上にも、それぞれ思い思いのキャラクターやアイテムが載っていて、思わず微笑を誘います。
…しかし、こうして「つくりもの」を笠の上に載せて踊るという趣向は、まぎれもなく風流本来の趣向なのです。「人目を惹く」「一回限りの」という、中世風流の
Sence of Beauty は、子どもたちの選んだ玩具にまで美事に受け継がれていたのでした。

岬をひと廻り踊った後、行列は港へと戻ってきました。
幟と旗を満艦飾に飾り付けた漁船が、踊り子たちを乗せると、次々に港の中心へ繰り出していきます。個性あふれる豊かな風流芸能のフィナーレを飾ったのは、七艘の漁船たちによる華麗なパフォーマンスでした。

舵取りの音頭にあわせ、右へ左へとお尻を振る船団は、いわれてみれば「稚児舞」という感じです。それにしても、「舟が踊る盆踊り」というのは、ついぞ聞いた覚えがありません。人目を驚かす趣向が風流の本質ならば、これもまた立派な風流の精神の現れといえるでしょう。

最後まで目の離せない盆踊りがようやく終わったのは、まだ太陽の高いお昼過ぎ。長崎の片隅の漁師町で人々に愛された風流は、”ぎやまん”のように夏の光にきらめいていました。

開催情報
日程 野母浦まつり
8月16日
(09年)
場所 長崎県長崎市野母町一帯
アクセス
(公共交通)
長崎駅より樺島方面行きバス約1時間(長崎バス)