初夏のある日。
大分県のみんみんさんから届いたメールには、大分県下の伝承系盆踊りと口説きの情報がびっしりと書き連ねてありました。大分県といえば有名な「姫島盆踊り」以外まったくノーマークだった私達は、びっくり仰天。「”無名の踊り”をぜひ見に来てください」というみんみんさんのご案内で、さっそくこの未知の盆踊り王国を取材することにしました。

国東半島の付け根にある山香郷は、その名の通り山と渓谷が綾なす美しい土地です。集落ごとに微妙に異なる踊りと口説きは、総称して「山家踊り」と呼ばれています。多くの盆踊りの中から、大字立石字竜ケ尾の盆踊りを訪ねました。

踊り場は山麓の見晴らしのよい広場。山の端から月が昇り、会場の精霊棚への手向けが終わると、盆踊りが始まりました。中央の音頭台を囲んだちいさな手踊りの輪が、少しづつ広がっていきます。台上には番傘を手にした音頭が、時におどけながら見事な口説きを披露します。楽器はシンプルに太鼓のみ。バチを握るのは自転車で駆けつけた小学生たちです。今年覚えたというその腕前はなかなかのものでした。三つ拍子、左ヱ門、セーロといった昔ながらの踊りをひとしきり楽しんで、盆踊りはおひらきとなりました。

供養踊りの由来や儀礼性、豊かな踊りと歌の伝承。こんな素晴らしい盆踊りが、ここ山香では集落ごとに盛んに踊られているのです。これほどの密度で伝承系の盆踊りが踊られているのは心底驚きでした。しかも、その一つ一つがきわめて貴重なものであるにもかかわらず、ここでは今なおありふれた生活の中の一風景なのです。
”無名の踊り”という言葉の持つ限りなく豊かな意味に思いを致して、私達はこの桃源郷を後にしました。

開催情報
日程 8月14、15日
場所 (山香地方一帯で開催)
アクセス
(公共交通)
博多駅からJR西日本特急ソニックにちりんで宇佐駅(1時間40分)→日豊本線各駅停車大分行きで立石駅(10分)

アクセス
(自動車)