夕空に浮かぶ山々のシルエット。どこまでも広がる、吸いこまれそうな稲穂の波。
もう随分歩いたのに、まだ六斎念仏には出会えません。いったいここはどこなのでしょうか?どこか懐かしいような、迷いこみそうな光景。
…風に乗って、かすかに鉦の音が聞こえてきました。どうやら方向は間違っていなかったようです。わたしたちは確信をもって足を向けました。
若狭街道に面する三宅地区は、古い集落のかたちを残す農村。盆踊りとも関係の深い「六斎念仏」の里として知られます。ちょうど念仏の終わった旧家から、保存会の人たちが出てきました。締太鼓を手に活発に踊るのは、子どもたち。大人はもっぱら鉦と念仏を担当します。聞いてびっくり、これから手分けして約八十戸ある集落のすべての家(!)を廻るとのこと。
かくもつよい人々の結びつきが、この貴重な念仏芸能を今日まで受け継いできたのです。わたしたちも皆さんの後について、一軒づつゆっくりとまわることにしました。
…暗くなった夜道でふと耳をすませば、虫の声、小川のささやき。稲田を渡る風の音。そこここから立ちのぼる六斎の鉦の音が、近くの山々にこだましています。静かで幻想的な響き。かつてわたしたち日本人は、こんな豊かな音の宇宙に生きていたんだ…。
さそわれるように空を見上げれば、いつしか満天の星がきらめいていました。
開催情報 | |
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日程 | 8月13~14日 |
場所 | 福井県三方上中郡若狭町三宅 |
アクセス (公共交通) |
小浜線上中駅より徒歩20分程度 |
アクセス (自動車) |
国道27号と国道303号の交流点側三宅地区 |